最近、投資家界隈で評判を集めているトルコリラFXの異業者両建てスワップサヤ取り戦法。
為替変動ヘッジ(回避)でき、業者間のスワップ金利差を得ることができるという点でリスクなしで運用できるといわれています。
ですが、スワップサヤ取りは色々と欠点がありおすすめできません。その理由を書きたいと思います。
目次はこちら
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異業者両建てトルコリラFXスワップサヤ取りとは?
まず、スワップサヤ取りについて簡単に解説しておきます。
いわゆる裁定取引(アービトラージ)というもので、FX異業者間のスワップの金利差を利用して、売りと買いを両建てし、為替変動をヘッジして、異業者間の金利差だけを得る手法です。
例えばトルコリラの場合、
まずはトルコリラの買いスワップの金額を見てみましょう。
FX会社名 | スワップ | スプレッド | 最小取引通貨単位 |
GMOクリック証券 (くりっく365) | 21円 | 5~7銭(変動制) | 10,000 |
みんなのFX | 25円 | 1.6銭 | 1,000 |
LIGHT FX | 25円 | 1.6銭 | 1,000 |
SBI FXトレード | 19円 | 1.89銭* | 1 |
セントラル短資FX | 2円 | 8銭~18銭 | 10,000 |
インヴァスト証券 | 5円 | 1.5銭 | 1,000 |
ヒロセ通商 | 18円 | 1.6銭 | 1,000 |
GMOクリック証券 (FXネオ) | 21円 | 1.9銭 (原則固定の適用対象外) | 10,000 |
サクソバンク証券 | 18円 | 平均1.9銭 | 5,000 |
FXプライム byGMO | 13円 | 4.8銭(原則固定) (1,000通貨は手数料30円発生) | 1,000 |
OANDA Japan | 10円 | 12.2銭 | 1 |
*ただし、取引数量によって変化
買いスワップ金利が高い、みんなのFXですと10,000通貨あたり1日50円のスワップが発生します(2020年2月時点)
続いて売りスワップですが
- セントラル短資:-35円
- GMOクリック証券:-39円
一方、売り建てでは、セントラル短資が10,000通貨当たり1日35円のスワップ支払となっています。(2020年2月)
ここで、両者に金利差があるわけです。
ですので、例えば、みんなのFXでトルコリラを買い、セントラル短資で売りを入れておけば、異業者間の金利差である約15円(50円-35円)を得ることができます。
しかも、買いと売りを両建てしているので、トルコリラの価格が変動してもプラマイゼロで、スワップの差額だけ受け取ることができるという仕組みです。
為替変動のリスクをヘッジして、サヤ取りだけできるということですね。
しかし、この両建ては色々とリスクがあります。
スワップサヤ取りはおすすめできない理由とは
私はこのスワップサヤ取りをしようとも思いませんし、おすすめしたいとも思いません。
なぜなら、結局儲けることができない、もっと言うと、時に大きく損をしてしまう可能性があるからです。
以下、具体的にスワップサヤ取りがおすすめできない理由をあげてみます。
おすすめできない理由①:レバレッジをかけないと利回りが低い
まず、スワップサヤ取りは差額である分、利回りは低いです。
トルコリラの場合、買いだけれあれば、1日約120円のスワップ金利を得ることができ、利回りも年率10%以上あります。
(参考:トルコリラFXで堅実にスワップ金利収入を稼ぐ方法を検証しました。)
しかし、買いと売りを両建てすることで利回りはかなり下がります。
上述した通り、差額が15円とすると
15円×365日=5,475円
年間5,475円となり。
トルコリラの価格を18円とすると
5,475円÷(18円×10,000)=3.0%
となります。
しかも、売りと買いを両建てしているということは、資金は2倍必要になりますね。
実質利回りは3.0%÷2=1.5%
1.5%となり、米ドルの利回りよりも劣ってしまうというわけです。
デフォルトのリスクさえある、トルコにこれだけ手間をかけて、利回り2%以下というのは果たしてやる意味があるのかな?と思いますね。
(トルコ経済の動向も併せて参考に)
となると、利回りをあげるためにレバレッジをあげることになります。
多くの投資ブログでも為替変動リスクがヘッジされているのでレバレッジを上げることを進めていますが、これが大きなリスクとなります。
おすすめできない理由②:レバレッジをかけると売り買いの一方がロスカットされてしまう
ではレバレッジをかけるとどうなるか?
最近は特に暴落が多いトルコリラです。
ここ数年のトルコリラ円チャートを見てみましょう。
(参照:SBI証券 トルコリラ円チャート2015年~2020年)
2018年に入るころまで30円あったトルコリラが2018年7月には15円まで暴落しています。
やはり金利が高い分、リスクもものすごく高くなるわけです。
30円から15円までの暴落だと、下落率は50%です。
つまり、レバレッジ2倍でも、買い玉は強制ロスカットされてしまうというわけです。
強制ロスカットはその時の価格、その時のスプレッドで成り行き注文されてしまいますので、大きな損失となります。
しかも、ロスカットは一瞬の暴落時にも発動してしまいます。
暴落は一瞬下がって、またすぐに戻るケースが多いのですが、その時に、売り玉を決済しても手遅れです。
決済価格に差が出てしまい、為替変動リスクをヘッジできない状態になってしまうんです。
スワップサヤ取りは確かに平常時はいいのかもしれませんが、大変動時に意味がなくなってしまいます。
なんだったら今までの儲けも失ってしまうわけです。
平常時用であれば、米ドルの買いだけでの方がよっぽどいいと思いますね。
ただ、このロスカットに対しては逆指値注文(ストップ注文)で対応すればいいだろう?という意見もあるかと思うので、こちらについても次で取り上げます。
おすすめできない理由③:大変動時は逆指値注文(ストップ注文)など無意味
大変動を予測して、逆指値注文をしておけばサヤ取りも問題ないだろうという意見、ブログをみかけます。
恐らくこの人は大変動を経験していないのではないかと思いますね。
逆指値注文とは例えば買い建ての場合、〇〇円まで下がったら、決済注文をいれておくという注文方法です。
例えばトルコリラを20円で買っておき、15円まで下がったら、一旦決済するという注文です。いわゆる損切注文ですね。
そして、売り建ての方では、15円で利益確定をしておくということです。
これで仮に15円まで暴落したとしても、買いと売りが同時に同じ価格で決済されるので、為替変動リスクをヘッジできるというわけです
OCO注文といって、例えば20円での買い建ての場合25円になったら決済注文、15円になったら損切注文、と両方を設定することができますので、暴落でも暴騰でもどちらでも対応できるようになっています。
しかし、これには問題があります。
なぜなら、逆指値注文は大暴落時には刺さらないからです。
大変動時は「値飛び」が起きます。
15円で損切指値注文をしていたとしても、大変動時は17円あたりから、一気に13円まで飛ぶこともあるわけです。
その場合、15円になるまで決済注文が通らないため、買い建てを決済できず、買い建ては保有したまま、一方、売り建ては決済注文のため有利な価格であれば決済されてしまいます。
となると、また、買い建てだけが残ってしまい、そのまま、さらに暴落し、買い建てが強制ロスカットされてしまうという事態が起こってしまうわけです。
そうであれば、逆指値注文を指値でなく、成行注文しておけばいいということですが、これも同じで、大変動時に成行注文をしてしまうと、かなり不利な価格で約定してしまうので、おすすめできません。
しかも、やっかいなのが、大変動時のスプレッドの拡大です。
次に書きますが、大変動時は業者によって大きくスプレッドが開いてしまいます。
これは「ストップ狩り」なんて言われていますけど、スプレッドを大幅に広げる(広がる)ことで、逆指値ラインに意図せず到達してしまい、買い建てだけが決済されてしまう可能性があるというわけです。
しかも、スプレッドが大きく広がった状態で決済されるので、かなり損になります。
結局、大変動時にレバレッジをかけたものを保有し続けるのは両建てであってもリスクでしかないわけです。
おすすめできない理由④:大変動時に業者によってスプレッドは大きく広がってしまう
特にトルコリラで顕著なのですが、大変動時、暴落時は業者によって大きくスプレッドが広がってしまいます。
【トルコリラのスプレッドまとめ】
今朝のスプレッドの広がり
現在確認出来ている最大値☑️みんなのFX 25pips ※
☑️GMO FXネオ 28pips
☑️セントラル短資 60pips
☑️FXプライム 203.5pips ※
※スクショありFXネオはチャートから
セントラルはツイートよりくりっく365、マネパは不明
— ふーじー@妄想投資家 (@otameshi_labo) 2019年3月28日
例えばFXプライムbyGMOに至っては203pipsも広がってしまうわけです。
2019年3月の変動でこの広がりですので、2019年1月のフラッシュクラッシュ、2018年8月の大暴落時にはもっとひどいことになっているわけです。
スプレッドが広がったことにより、逆指値注文が発動、強制ロスカットが発動なんてことにも全然なりえます。
しかも、業者によってスプレッドの広がりも全く違わけですので、異業者間で売り買い両建するなんてことは、まったくおすすめできないです。
おすすめできない理由⑤:スワップの金額は毎月変動する 特に変動時
さらにスワップの金額は毎月変動します。
私もトルコリラ投資を3年以上やっていますが、大暴落時はスワップの金額も下がります。
上述の通り、今では120円ほどの買いスワップ金利が出ますが、2018年8月のころは多い業者でもスワップ金利は80円しか出なくなってしまっていました。
それで売りスワップの金額はかわないため、買いスワップと売りスワップの差が逆転してしまう可能性されもあるわけです。
また業者によってはキャンペーンなどでスワップを一時的に高くするところもあり、そういったFX業者を使っていると、キャンペーン後にはスワップが下がるため、また別の業者に乗り換えなければならず、かなり手間がかかります。
では、なぜ、多くのブログでFXスワップサヤ取りがおすすめされているのか?
以上の通り、スワップサヤ取り戦法は大きなリスクがあり、利回りも小さいため、ほとんどメリットがないわけです。
ですが、多くの投資ブログで、両建てを戦法をおすすめされています。
その理由ですが
FX両建て戦法がおすすめされている理由
- FX口座を2つ開設してもらえる⇒アフィリエイト報酬(成果報酬)が二つもらえる
- レバレッジをかけてトレードしてくれる⇒業者にとっても客単価が高くありがたい
と推測されます。
ユーザーのメリットをあまり考えていないものと私は思いますね。
トルコリラといった暴落リスクが高く、値飛びリスク、スプレッドが大幅に拡大する可能性があるものは両建てをしてもリスクヘッジにはなりません。
レバレッジをかけなければ理論上問題はないが・・・
トルコリラのスワップサヤ取りですが、やはりレバレッジをかけるとリスクが高いです。大変動時に恐らく今までの利益を失ってしまうでしょう。
では、レバレッジをかけなければどうでしょうか。
レバレッジをかけなければ、恐らく、大変動時もロスカットの心配はないでしょう。売り建ての方は天井がないので、わかりませんが、トルコリラがいきなり20円から40円をこえてくるなんてことは可能性としては低いと思います。
ですので、ロスカットの心配がなく、為替変動のリスクなしにサヤ取りが可能です。
ただ、上述した通り、資金は売りと買いで2倍必要で、利回りも2%以下となります。
何が起こる変わらないデフォルトリスクさえあるトルコリラで利回りが2%以下というのはちょっと割に合わないと思いますし、スワップの金額は変動しますので、業者の移動などの手間を考えると、私はあえてやりたいとは思いませんね。
では、ローリスクで資産運用するにはなにがおすすめか?
私もスワップ狙いでトルコリラや南アフリカランドの投資をしています。
ただ、両建てではなく、レバレッジをかけず、買い一本です。
南アフリカランドはなんとか6円から9円まで回復してくれているので、トータルでプラスになっています。(南アフリカランドスワップ投資 現在の損益状況)
一方、トルコリラは以前20円までしか回復してくれていませんので、スワップ金利を合わせても含み損はマイナスです。
レバレッジをかけていなくても、結局、トルコリラのように塩漬けになってしまっては意味がありません。
スワップ金利の高さだけを見て投資するのはお勧めできません。
色々と新興国通貨のスワップ投資をしてきましたが
現時点での私の見解は米ドル円がトータルで最も利益が出ると思っています。
参考:FXで米ドル積立投資を1年間続けてみた結果【2018年全約定履歴公開】
確かに米ドル円はスワップ金利はそれほど大きくありません。
年利想定利回りは2%ほどでしょうか。
しかし、記事にも書いていますが、米ドル円は暴落しても元値に回復する可能性が高いんです。
つまり、トルコリラが40円から15円まで暴落して、いまだに20円であるのに対して。
ドル円は英国EU離脱等で100円を一時的に割ったとしても、また110円、120円に戻ってくるんです。
米ドル投資なら、スワップ金利だけでなく、決済利益も得ることができるわけです。
この点を踏まえると、トータルの利回りは最も高いのではないかと思いますね。
もちろん、今後どうなるかは分かりませんが、トルコリラや南アフリカランドをメインに行くより、断然米ドル投資をおすすめしたいですね。
私も米ドルをメインに、サブ的に、トルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドに投資するようにしています。
新興国通貨の投資方法 暴落時のみ買う
さて、メインは米ドル投資をおすすめしているのですが、サブで新興国通貨にも投資をしています。
その際、意識していることは「暴落時に大きく買う」ということです。
トルコリラやメキシコペソ等はやはり暴落リスクが高いです。
ですが、チャートを見てもらえればわかる通り、暴落後は戻りがあることが多いです。
トルコリラはちょっと厳しいですが、15円に暴落後は一時21円くらいまで回復しています。
ですので、ただ単純に毎月積立投資、ナンピン投資をするより、暴落時に大きく買った方が勝率が高いというのが、現在の私の考えです。
詳しくは「新興国通貨FXで堅実に稼ぐための戦略を検証(リラ、ペソ、ランド)」の記事に書いていますので参考に。
とはいえ、投資はくれぐれも自己責任・自己判断でお願いいたします。
まとめ トルコリラスワップサヤ取りはおすすめできない理由
以上、スワップサヤ取りがおすすめできない理由を書きました。
まとめますと
- サヤ取りはレバレッジをかけないと利回りが低い
- レバレッジをかけると一方だけが強制ロスカットされる可能性が高い
- 大変動時は値飛びが起き、逆指値注文(ストップ注文)は意味をなさない
- 大変動時はスプレッドが業者によって大きく広がり、ロスカット狩りに合う
- スワップの金額は毎月変動するので口座を入れ替えなければならない
以上の点から、私はスワップサヤ取りはおすすめできません。
特にトルコリラなんて言う不確定なものに大きな資金を充てることはしない方が良いと思っています。
ローリスクでいくなら、トータルの利益を考えるなら米ドル円積立FXがいいでしょう。
もちろん、投資は自己責任ですので、上記のリスクを踏まえ、それでもサヤ取りをしたいのであれば、それは良いと思いますし、実際に大きく稼ぐことができるかもしれません。
ただ、単にどこかのブログでまるでリスクなしにサヤ取りができると、勘違いされている方がいれば、この記事を読んで、役立ててもらえれば嬉しいです。
以上、最後まで読んでいただきありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。投資は自己責任でお願いいたします。